球体地獄
はんぺんくっく
鉛色のコンクリで護岸された
僕の水無し川に
カノジョがいる
黒い脂ぎった髪を振り乱し
フリッフリのスカートでしゃがみこむ強烈
手には塗装のはげた水色のスコップ
そいつで僕の川底に穴を空けようというのか?
ザクッザクッ ザクッザクッ×3
ヤメロッ
ザクツ・・・
カノジョが振り向きざまに言う
ニャロメ?
口もとを歪ませ・・・
笑っているのか?泣いているのか?
お願いだからヤメテクレ
懇願するが
カノジョはやめない
そのうちかっさかさの川原石に
じんわーと液体が滲み出てくる
ザクザクザクザクザクザクザクッ×19
僕はえぐえぐすすり泣く
止めるすべもなく
ただ僕が僕であろうと護岸してきた水無し川が
人並みに潤いを宿し
そのうちゆるゆる流れ出し
川としての機能を持ち始めるのを
人事のように見守るしか・・・
足首まで水位は推移している
カノジョがクスリと呻いた
僕はおどけて小さくジャンプした
カノジョハトリツカレテイル
ボクハツカレテイルダケ
深々一刺しスコップずさり
途端に川底が爆ぜ
水柱が轟音を上げ
カノジョが吹っ飛ぶ
ボクも一緒に
そうして
くっそ冷たい空の下
出来立てほやほやの3流河川にポカポカ浮かび
ボクラは笑い合いながら流されていく
海へ