球体地獄
七夕蝶
夜
人目を偲んで2匹の蝶が飛んでいた
不倫だった
雄はモンキ蝶。雌はモンシロ蝶。ただでさえ決して叶わぬ禁断の恋。お互い家庭を持っていて昼にはべつべつの生活。そして夜こっそりとキャベツ畑を抜けだして逢引きするのだ。
彼らを見て「二つ折りの手紙」と言ったのは誰であったろうか?
ネオンに照らされ交わる白と黄色の羽無数
生活に疲れ果てた2匹はくるくると気も狂わんばかりに舞いながら延々と夜空を飛び回るのだった。
しかしそんな関係がいつまでも続くはずもなかった。モンシロチョウの夫が妻を疑い始めたのだ。もはや二人の噂話でキャベツ畑はもちきり。
「もう観念するしかない」
モンキチョウは顔面蒼白。モンシロチョウは言う。
「一緒に逃げましょう」
「いや・・・・」
気まずい沈黙。そして。
「なら一緒に死んで!」
二人はもう離れられない。彼らは1組の手紙。その羽に書かれたのは、告白と懺悔と悲しみと、そして願い。
逃亡の果てにたどり着いた先
メラメラと夜空を炙る巨大な篝火
そこに堕ちていく
4枚の遺稿
願いは燃える
笹の葉とともに
さらさらと