青春の残像~IN MY LIFE
五年を待たずして、会おうと思えば会うことは可能だろう。だがそれはお互いの望むところではない。街で偶然会えば会釈くらいはするだろうが、五年後に公式の場で再会したいものだ。
「じゃあ、元気でな」
「坂井君もね」
背中を向けた真理を見送る僕の心に、清々しいそよ風が吹いた。
五年後に再会した時の真理も、きっと素敵に歳を重ねているに違いない。僕はそう信じていた。
僕は背中に遠ざかるヒールの音を聴きながら、セカンドバッグの上からRUBBER SOULのCDを確かめる。これでTHE BEATLESのCDが全部揃った。同時に僕の未精算の過去というパズルがひとつ埋まった。
今夜は子供が寝た後、ひとりで「IN MY LIFE」を聴こう。しばし青春の残像に酔った後、未来を生きていくために。
(了)
作品名:青春の残像~IN MY LIFE 作家名:栗原 峰幸