本日は海星なり
片瞑
私は愛されている
カタツムリは片目瞑り思う
殻をノックもせずに
黒くてツヤツヤした三角の頭が
無断侵入してきた
私の家は
彼の侵入を拒む貞操を
持ちあわせてはいなかった・・・
カチカチ
彼の牙は・・・
とても素敵
私は・・・
何もかも初めてで・・・
抗うということを知らずに・・・
彼は激しい
まるで・・・
私を殺そうと・・・
じゅるりじゅるり
彼の唾液が
私の身を・・・
私の・・・粘液に塗れた肌を・・・
肉を・・・溶かしていく・・・ぅ
柔らかな肌に包まれた
心の硬質な部分が
粉砕される感覚
それは絶望に似た感覚
それは絶対的な快・・・楽
彼の唾液
私の粘液
とろけた肉汁
混ざり混ざって
とろみとろろみ
私の体
その状も情も
もはやほぼ液
滴る液は
その根拠を汁すべも無き
愛の液体
そは愛液・・・
廃液に非ず・・・
この液に愛を付せずして
如何なる液に愛を冠するや・・・
嗚呼・・・もっと
私を・・・
命ごと溶かして・・・
欲しい・・・
そして十分に愛されて明け方
執拗に肉を汁を貪った
強靭な甲虫が
頭を引き抜き
やっと去っていく・・・
後には殻が残る
その殻の空洞では
死と快楽が纏わりつくように
残響していた・・・
喰い残された片目が
大きく見開いて
朝日の訪れを眺めていた・・・