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十のちいさな 小さなものがたり 1~10

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 前回と同じ荒川の土手に、多くの人たちが集まっていた。
 良太の腹にもたれて立つ七歳になる男の子と佐代の着物の袖を引っ張る四歳の男の子、そして佐代は、手にはでんでん太鼓を持って乳飲み子を負ぶっている。
 幸助は、仕掛け花火をしたいと伝えていた。
 数本の打揚筒に、大きさの異なる尺玉を大きさの順に、手探りで詰めていく。こればかりは他人に任せたくはない。
 玉に、一緒に来てほしい、手伝ってほしい、と頼んだのだが断られたのだ。
 人前に出るのは、勘弁してほしい、と。
 玉、いくぜ! 気合を入れ、導火線に火を入れた。
 
 順次放たれた花火は、低空から上空に向かって順々に炸裂していった。低空で龍の顔が現れたかと思うとそれは胴体に変化し、上に向かうにつれその顔は大きく、そして天を仰ぎみている。
 そこに現れたのはまさしく、天に向かって駆け昇る龍だった。
 
 川の音が小さく聞こえていた。小さく手を叩く音がしたかと思うと、それはいきなり怒涛のように押し寄せてきた。
「幸助、素晴らしい出来だ」
 鍵屋清兵衛は手を叩きながら近づいて来ると幸助の肩に手を置き、手を握りしめた。
「明日、おめぇの住まいに寄せてもらおう。いろいろと打ち合わせがしたいからな、お内儀にも会わせておくれ」