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十のちいさな 小さなものがたり 1~10

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 幸助は尺玉が炸裂した時、まともに目を向けていたために、網膜が焼けて見えなくなっていた。お店(たな)を継ぐのは良太に決定した。佐代の婿となるのだ。
 ぼんやりとしか見えない幸助を憐れんだ親方は、住まいを捜してやり、尺玉に入れる星を作る仕事をあてがった。
 薬の計量は無理なので、そればかりは良太が請け負ってくれた。薬の種類ごとに、それが分かるようにした薬包紙に包んで届けてくれた。それらを配合していくのである。
 何度もふるいに掛けて混ぜ合わせると、火薬が出来る。
 星掛け機を回しながら、芯とする粟粒に、水で練った火薬と粉末のままのものとを交互に掛けて、ゆっくりと大きくしてから乾燥させると、花火に使う星の完成となる。

 いつの間にか、玉という女が居座り、幸助の女房となっていた。
 玉は計測器を置くことを要望し、薬の計測や、ふるいをかける配合などを手伝った。羽釜のような形をした星掛け機が回っているのを、いつも興味深げに、幸助の横に座って眺めていた。中ではたくさんの球形をした星が、グルグルザザァー、と回っている。

「お玉おめぇ、火薬を扱ってたことがあるのかい」
「まぁね、ただそばで、見てただけだけど・・・それよりさ、何年か前に打ち上げた花火、あれを作ろうよ」
「そうだな、また作りたいが・・・だがおめぇ、なぜそのことを知ってんだ?」
「そばにいたんですよ」
 それ以上玉は喋らなかった。


 幸助は、も一度自分で創意工夫をした尺玉を作りたい、と思うようになり玉に、その浮かび上がった造形を説明した。時には見えない眼で、図を描いた。
 玉の眼を頼りに星を作り、玉の眼を頼りに造形どおりに玉込めをし、和紙を幾重にも張っていく。乾燥などにはかなりの日数が掛かる。
 そうしてようやく、完成品を物にした。
 しかし出来上がったものの、試し打ちは出来ない。

 独立後初めて鍵屋に出向き、親方の清兵衛に頭を下げた。
「親方、おねげぃしやす。あっしの作った花火を、どうか見てやってくださいまし」
「おめぇ、目が不自由なのによく作れたもんだ。聞くところによると、うちで先に飼ってた猫のタマ、おめぇんとこにいるってか」
「いえ、タマはあの時以来見てません」

 佐代が可愛がっていた猫はまた、幸助にもよく懐いていた。作業場におかれた座布団の上に丸まって、幸助の手と、グルグルと回る星掛け機を、興味深げに見つめていたものだ。
「おめぇにえらく懐いてたからな、うちからもいなくなってしまってよ、ひょっとしてって思ったもんでね。ああ、花火な、いいもんが出来たというなら、支度はうちでしてやろうじゃないか。運搬は、うちの若いもんに任せてくれ」