「夢の中へ」 第七話
「さて、まどかとやら・・・フロイスから聞いた話じゃが、そちは外国を知っておるとか?まことか?」
「少しではありますが存じております」
「そうか、何ゆえ存じおるのじゃ?」
「お答えは出来ませぬ。お許しくださいませ」
「何故じゃ?都合が悪いことでもあるのか?口止めをされておるならその相手を申せ。わしが許せと申し渡すゆえ」
「そのようなことではございません」
「解らぬのう・・・信長がひょっとして嫌いか?」
「めっそうもございません・・・」
「よし、二人だけで話そう。心開いて話そうぞ。皆の者、下へ控えておれ!」
天守閣は信長とまどか、藤子だけになってしまった。
「これでどうだ。そちの話したことは誰にも言わぬ。約束じゃ・・・申されよ」
まどかはうつむいてしばらく言葉を出せなかった。それは決して理解される話しではないと思えたからだ。
「お許しくださいませ・・・私には申し上げられません」
「では良い!どうじゃこれを見たことがあるか?」
テーブルの上においてあった地球儀を信長は見せた。
「古いものでございますね・・・よく知っております」
「そうか!古いものと言ったな、では新しいものを知っておるのだな?申せ、どのように違う?」
「はい、ヨーロッパの辺りは正しく描かれておりますが、アジアは少し違っています」
「なんじゃ?ヨーロッパ?アジア?」
「この辺りを指してヨーロッパと呼びます。こちら側がアメリカ。そしてアジアは日本を含むこの辺りです」
「そうか。日本は正しいのか?」
「北の方は違っていると思います」
「どんな風にじゃ?」
「北海道が描かれておりません」
「北海道?北のどこにあるという?」
「東北・・・陸奥のさらに北、海を渡って広大な土地があります。そこが北海道です」
「海を渡って、まだこの国が治める土地があるというのだな」
「はい、そうです」
作品名:「夢の中へ」 第七話 作家名:てっしゅう