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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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電話にまつわるへんな話

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不思議なキミエちゃん



 ワタクシの町には一応全国的に有名になった「ビッグひな祭り」なるイベントがある。
 数年前のその日そのとき、ワタクシは見物人の人混みをかき分けながら、単なる買い物のために通りを歩いていた。

 すると。
「あちさん、あちさん」という声がした。

 それは昔漫画を描いて同人誌を出していた頃のワタクシの呼び名で(今はHPだけで使っているが)、リアルで知っている人はほとんどいないといっていいほど、ごく一部の人しかしらない呼び名なのだ。

 ということは、かなり古い知り合いだなと思いながら見回すと、キミエちゃんがいた。

 キミエちゃんは高校生の頃、よくうちに友だちと遊びに来ていた子だ。実にン十年ぶりで会ったキミエちゃんは変わらずかわいかった。

 なつかしさにしばらくその場で話し込んだが、ワタクシも用事があったのを思い出して、彼女の携帯番号を聞いて、「暇なときに遊びに来てね」と言って別れた。

 その後、ワタクシは会社のイベントに彼女を誘おうと携帯電話をかけた。

「もしもし、○○○キミエちゃん?」
 いちおうフルネームで確かめた。


 ところが、なんと、帰って来た返事は

「あ、キミエはわたしの母です。わたし娘なんですけど」

 へ?

「あら、ごめんなさい。わたし昔の知り合いで、この間久しぶりで会ったとき、この番号を教えてくれたんです」
「なんで、母はわたしの番号を……? じゃあ、母の番号教えますね」
といって、娘さんはキミエちゃんの番号を教えてくれたのだった。

 さて、ワタクシは改めてキミエちゃんに電話をかけた。

「○○○キミエさんでしょうか?」
「いいえ、ちがいます」

 へ?

「すみません。聞いた番号なんですが、○○○-△△△△-××××でしょうか?」
「番号はあってますけど」
「そうですか。もう一度確認します。失礼しました」
と言って、切ろうとしたところ、相手は親しげに話しかけてくるではないか。

「なにかご用ですか?」
「会社のイベントの食事会があるので誘おうと思って電話したんです」
「いつですか?」
「7月の○△日です」
「あ〜その日はキャンプに行くんですよ」

 え? キミエちゃんじゃないんなら、関係ないし〜と思いつつも

「あら、そうなんですか?」と返したワタクシ。しかし、声はたしかにキミエちゃんなのだ。
 どうにも腑に落ちないので、もう一度聞いてみた。

「ほんとうにキミエちゃんじゃないの? わたしは昔キミエちゃんが遊びに来ていた△△△なんだけど」
「ええ〜〜 知りませんよ」
 とか言いつつも、彼女は楽しげに話し続けるのだ。

 さしものワタクシももうこれ以上話しても不毛だと思い、適当に相づちを打って電話を切った。


 いったい、このときの電話の相手はだれだったのだろうか?

 未だに謎のままなのである。