蒼空の向こう
第3章・プロローグ
祖父が好きだった。大好きだった。祖父に憧れ、漁師になろうと幼い頃から決めていた。
僕は9歳で家を出て祖父の許で暮らすようになった。漁師である祖父に弟子入りしたのだ。
両親は反対しなかった。反対しなかったと言うのは、祖父の許で暮らすということをだ。
漁師を継がせる気はさらさら無かったようだった。
学校が引けると真っ直ぐに家へ帰る。ランドセルを放り投げ、漁に使う道具や網を仕舞ってある納屋へと急ぐのだ。祖父は決まってそこにいて、笑顔で迎えてくれた。
「じいちゃん!」
「オォ、来たか〜はじめ」
「じいちゃん!それ、僕がやる!」
「はっはっ・・・・まだまだ任せられんなぁ!」
「無理か?」
「網の修理はまだまだ先だ」
「じゃぁ・・・何をする?」
「船の生けすにカワハギがはいっとる。3匹、はじめんとこへ持って行け」
「うんっ!」