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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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 僕は港に泊めてある伝馬船へ走っていく。石の階段を駆け下りると、義経顔負けの身軽さで伝馬船に飛び移った。
 船底が生けすになっている。その中から小ぶりのカワハギを3匹、網ですくうと後頭部に鉤を刺して締めた。
 そうすることで魚の血流が止まり、鮮度が保たれるのだ。

 カワハギ3匹を籠に入れ、家へと走る。ひたすら走る。いつも全力疾走だった。
そんな僕に、島のおばさんたちは声援を送った。

「はじめ〜〜〜もっと、早う走れんとか〜〜!」

 僕はそれが悔しくて更にスピードを上げた。家に着く頃には肩で息をしている。

「母さん!・・・かあさ〜〜ん!」

 母屋から母が出てきた。

「今日は何ね?」

「カワハギ!」

「そうね・・・どれ・・・・ちょっと小さかねぇ」

「大きいとは、売るけん・・・ダメ」

「そうやね・・・これで充分やね」

 母親がそう言うか言わないうちに、僕は祖父の許へ全力疾走していた。
 島のオバサンたちが応援する。
「はじめ〜〜〜!もっと、早う・・・走らんかぁ〜〜〜!」

作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ