蒼空の向こう
「・・・・少々、お待ちください。・・・・先生!お電話です。のもと様」
「野本?」
「はい・・・女性の方です」
思い出した・・・野本麻美・・・・ブルーモルフォ。
僕に電話が入った事で、末永達との自己紹介は中断し、石岡は笑顔で軽く頭を下げると一階へ降りていった。その後を、末永が金魚のフンの様に着いて行くのが可笑しかった。僕は、受話器を受け取った。
「梅雨川です・・・・」
「あ・・・先生・・・すみません、初日からお電話しちゃって・・・」
「構いませんよ・・・先日は・・・」
僕は、そう言いかけて、言葉を無くした。一昨日の事が、まるで、ゴム鞠が弾けるように蘇ったからだった。
あの夜、僕は、平田社長に勧められるまま、強かに飲んだ。ヘネシーが3本、空になった。
僕は、板前を6年間、経験している。カウンター越しに、上客からの勧め酒のお陰で、酒には強くなっていたが、流石に酔った。
結局、僕らは、その日の最後の客になり、酒席は、お開きとなった。
精算を済ませた平田社長が、笑顔で握手を求めてきた。
「先生、来週からお願いしますね。おかげで、今日はいい酒でした。西田社長も遊びに来てください。色々とお願いしたい仕事もありますから。」



