蒼空の向こう
「先生、紹介したい人がいるんですけど・・・」
「ええ・・・誰です?」
「彼女・・・先生を、彼女に紹介してもいいですか?パートのおばちゃんだけど・・・下にいますから、呼んできます。」
いきなり、彼女を紹介させてくれと来た。しかも、パートのおばちゃんだと言い切る。やはり、新しい世界だ。この男・・・末永正雄・・・只者じゃない。
末永は、企画室から、そそくさと出て行った。
何故・・・初出勤の・・・初顔合わせ場で、彼女の紹介なのか?
末永正雄、38歳。独身なのか?まさか、不倫相手の紹介でも無いだろう・・・。僕は、彼の不可解な行動に首を傾げた。
ただ、直感で・・・ジャック・ニコルソン・・・いや、末永の鋭い感性を感じ取った。同類では無いと思う。むしろ正反対。ただ、波長が似ている。波長と言うより、波色が似ている気がした。
僕は、平野と美香から商品の説明を受けた。無数にあるファンシーグッズ。そして、アイドルグッズの数々。こういう物の存在は知っていたが、見るのは初めてだ。いや、街中で見たのかもしれない。しかし、興味も無い人間の目には映らない代物ばかりだ。一つ一つ、手にとって見た。
良く見れば、アイドルグッズが半分を占めている。テレビを賑わしているアイドルグループ、S××P・・・手鏡、バンダナ、メモ帳、キーホルダー、クッション、ペンシル・・・何でもある。
僕は文具屋が好きで、良く足を運ぶ。目の前の商品群は、僕の心の端っこを擽った。
ドアが開く音がして、振り返った。末永が、嬉しそうに立っている。顔は笑っているが、目が鋭いので、怖い感もある。その後ろに・・・美人が、照れくさそうに、末永の背中に隠れるように、佇んでいた。



