蒼空の向こう
「ありがとう!・・・先生・・・ギャラは、当面は30万でいいですか?」
僕は再び絶句した。勤めていた広告代理店の給料を越えていたからだ。
「お任せします・・・」
「企画部は現在3名です。末永と、あと女の子が2人。平野のいう子と・・・だれだっけ?川崎」
「え〜〜っと・・美香ちゃんです。河野美香・・・たしか20歳になったばかりかな・・・平野さんが22歳。末永君は確か・・・38だったかな」
末永正雄・・・この破天荒な男と、運命の出会いをする事になる。彼のように、太く短く。自由奔放に人生を走りぬけた男を、僕は知らない。
終始、笑顔でいたブルーモルフォは、マドラーをアイスペールに戻すと、掌を、その充実した太腿の上で揃えて僕を見ていた。僕は気がついてはいたが、そ知らぬ振りをしていた。
「あの・・・平田社長・・・先生にご挨拶しても、宜しいでしょうか?」
「そうそう・・・やり直し・・・こちらが梅雨川先生。先生・・・あさみちゃんです。中洲の歌姫ナンバーワン。美人でしょう?」
「ええ・・・入って来た時から、釘付けですよ・・・梅雨川です」
「私も・・・入ってこられた時から・・・ドキドキです」
「な・・・何!?・・・ホンとかね!?あさみちゃん」
冗談だとは、お互いに言えなかった。社交辞令のつもりだった。勿論、ブルーモルフォも同じだろう。



