蒼空の向こう
中米、コスタリカに生息する蝶・・・世界一美しいと言われる、幻の蝶・・・ブルーモルフォ。
胸の大きく開いた、タイトな青いドレスには、ラメの煌き。白い肌が際立ち、鎖骨の窪みが薄い影をつくっている。
装飾品は一切つけていない。夜の蝶のルールだと聞いた事があるが、定かではない。
華奢な上半身とは対照的に、充実した腰。その充実振りが、然程細くも無い・・・いや、細いのだろう・・・括れた腰が、「おんな」である事を、男の視覚に否応にも訴える。
布地を節約したかのように、極端に短いドレスからは、肉感的な太腿が、惜し気もなく露出され、緩いカーヴを描いて細い脹脛へと続く。
見事としか言いようの無い、美しい「おんな」の足が、真っ直ぐに伸びていた。
僕が目線を上げた時、そのブルーモルフォと目が合った。
少しだけ切れ長だが、それはメイクのせいかも知れない。長くて、カールした睫毛が上下に動き、その黒い瞳と視線が絡んだ。
頭の形は、やや細めの卵形。細い鼻筋の下に、厚くも薄くも無い唇が、控えめな赤いルージュで塗られ艶めいて、僅かな隙間から真っ白な歯が覗いていた。
背中までありそうな漆黒のストレートヘアーは、揺れる度に、月光の下の漣のように、光が流れる。
ブルーモルフォは、口角を上げて笑顔を作ると、深々と頭を下げながら声を発した。
「いらっしゃいませ・・・」
その肢体から・・・その声・・・納得のいく、甘くて、低い声を発した。