蒼空の向こう
「8時よ」
「そう・・・ありがとう」
受け取ったチケットをバッグに収めながら、ふと見上げると料金表があった。
「・・・・・8ドル?」
「あ、それはね一番後ろの席の値段。あなたの為に最高の席を取ってあげたわ。5列目よ。明日は楽しんで!」
「・・・・・そう・・・・まぁいいや・・・・ありがとう!」
「神の祝福を!」
帰り際・・・さっきの少年が手を振ってくれた。
ママ・アイ・ウォント・トゥ・シングという有名なゴスペル・ミュージカルがある。後に日本でも公演されたらしいのだが、その時は有名なゴスペル・ミュージカルだとは知らずに手に入れたチケットだった。
翌日、早めにアパートを出た僕はイエローキャブを拾い、ハーレムへ向かう。教会にはドレスアップしたアフリカ系アメリカンが集まりだしていた。僕は受付で貰ったチラシを眺めながら開演を待った。側にいた中年夫婦が声をかけてきた。
「日本人?」
「そうです」
「一人なの?」