蒼空の向こう
広いホールでゲームに興じていた子供たちの目が一斉に僕へと向けられた。
僕は精一杯の笑顔で挨拶をする。何人かの子供は真っ白な歯を見せてくれた。皆、ハーレムに住んでいるアフリカ系アメリカンの子達だ。
「・・・チケットは何処で買うの?」
僕の問いかけに年かさの少年が、長く黒い指で奥の方を指した。
「サンキュー」
聖堂へ続く通路の右側にチケット売り場らしきものがあった。
近づくとガラスの向こうにアフリカ系アメリカンの代表のような、大柄でメガネをかけた女性が座っていた。セルフレームのメガネが異常に小さく見えた。僕に気づくと一瞬緊張した面持ちを見せる。
「こんにちは」
「何か用?」
「チケットが欲しいんだけど。ミュージカルの・・・明日の晩」
「ああ・・・あるわよ。20ドル」
彼女はそう言いながら指を2本立てた。僕もVサインを笑顔と一緒に返す。
僕がポケットから10ドル紙幣を2枚出すと、彼女はお金を受け取ってからペラペラのチケットを差し出した。今度は笑顔のオマケがついてきた。
「観光?ジャパニーズよね」
「ええ、観光じゃないけど・・・・何時から?」