蒼空の向こう
「ブシュッ・・・ブュシュッ・・・・シュッ」
「チャーリー・・・頑張れ・・・頭を上げろ・・・頑張れ」
僕の体力は既に限界に達していた。しかし、海中に吸い込まれそうになりながらも、掴んだ首輪を上へ上へと持ち上げた。
「頑張れ・・・もう少しだ・・・」
僕達は何時しか堤防の裏側の岩場に近づいていた。だが、足が・・・腕が痙攣を起す。
もう駄目だ・・・僕は、そう思って首輪から手を抜くと、チャーリーの腰を押した。
再び、沈んでいく。すると、直ぐに足が着いた。いつの間にか、水深が二メートル足らずの所まで来ていたのだ。
僕は、海底をつま先で蹴ると、水面へ飛び出た。目の前に岸辺が見えた。もう、泳ぐ力は残っていない。沈んでは浮き、また沈んでいく。そうしながら、少しずつ岸に近づいた。水面から顔を出した時、チャーリーが岸辺に辿り着いたのが見えた。
沈んでは浮く・・・何度も繰り返した。僕は、遂に頭が出る深さまで岸辺に辿りついた。天を仰ぎ、肩で息をする。動けない。
岸は目の前だ。
僕は、岸へ向かって忍び寄るように水の抵抗を押しやった。
岸辺では、チャーリーが待っている。僕は、時間をかけて腰の深さまで辿りついた。
チャーリーが水に飛び込んだ。
僕は鉄のように重くなった体を必死に運んだ。
チャーリーが泳いできた。抱きしめる。
僕は岸辺にたどり着く事無く、その場に座り込んだ。限界だった。



