蒼空の向こう
「どうした・・・チャーリー・・・お前も淋しいか・・・淋しいよな・・・今頃、どうしてるかな・・・こんなんじゃ・・・こんなにメソメソしてたら、恭子に怒られるよな・・・怒られるよな・・・怒られても・・・いいんだよ・・・チャーリー・・・もう、息をするのも辛いよ・・・どうしようか・・・チャーリー・・・死ぬか?このまま一緒に死ぬか?」
港にはカモメが屯していた。その一羽が、すぐ目の前に降りてきた。
チャーリーは一瞬、カモメに反応したが、気に留める事もなく、更に身を委ねた。
「チャーリー・・・そんなに寄りかかったら・・・重いよ」
僕はそう言いながらも、脹脛に伝わってくる愛犬の体温を感じ取った。
「温かいな・・・生きているんだよな・・・お前は生きているんだよな・・・でも、俺は駄目だよ・・・もう生きていく力が・・・ごめんよ・・・チャーリー・・・もう無理なんだ」
僕は短くなったタバコを足元で揉み消すと彼方を見詰めた。
水平線が緩やかな弧を描いている。遥か彼方の入道雲はもう無い。
海と空の間は、霞が掛かった様にぼやけていた。
僕はゆっくりと空を見上げた。突き抜ける様な青い空には、綿菓子のような雲が不規則に浮かんでいる。涙が頬を伝って落ちた。
「待ってろ・・・今からそっちに行く」