蒼空の向こう
クァオーーーン!・・・遥か前方を走るワゴン車のテールランプが赤く点灯した。ブレーキを踏んだようだ。その距離が瞬く間に縮まる。
誇らしげに輝くスリー・ポイント・スターのエンブレムが認識できた。メルセデス・ベンツのエンブレムだ。
ヒール・アンド・トゥで3速までシフトを落としながらハンドルをわずかに切って車線を変える。追い抜きざまに、メルセデスを運転する男の顔が見えた。
その表情は、明らかに怒りを露にしていた。
メルセデスが追随して来た。負けじとアクセルを踏んだようだ。
パワーではメルセデスには適わない。ロードスターに並走して罵声を浴びせてきた。しかし、その声は届くはずも無く、血が昇って赤くなった顔だけが滑稽に見えた。
タイトなコーナーが迫ってきた。
僕はシフト落とすとレッドゾーンギリギリで侵入していった。迫り来る崖に、メルセデスは戦意を喪失したようだ。ブレーキを踏んだらしく、バックミラーの中で見る見る小さくなっていった。
「フン・・・」
コーナーのクリッピング・ポイントを過ぎると、再びアクセルをベタ踏みした。
クァーーン!