蒼空の向こう
第14章・レクイエム
僕はブリティッシュ・グリーンのオープンカーに乗り、浜玉有料道路を南下していた。
福岡=唐津を結ぶこの有料道路は利用車両も然程多くはない。
途中に海が見える。遠くには唐津の島々が望め、ベタ凪の海面が反射鏡のように煌いて眩しかった。
ツーシーターのライトウェイトスポーツカー、ロードスター。
真っ赤なブルゾンに黒いサングラス。短く刈り込んだ髪を、風がなぎ倒していく。助手席にはチャーリーが大人しく座って前を見ていた。
ナルディのステアリング越しに見えるスピードメーターが時速180キロを指していた。
明らかなスピード違反。トンネルに差し掛かった。
僕は、シフトをトップから一段落とす。タコメーターが一気に跳ね上がり、エンジン音が甲高く唸った。リトラクティブルのヘッドライトを上げると、パッシングしながらアクセルを踏み込んだ。
クゥアーーーン・・・というエンジン音が、かまぼこ型のトンネルに共鳴し、斜め後方から追いかけてくる。
ロードスターは法定速度で走る車を次々と追い抜いていった。
長いトンネルの出口。僕はシフトをトップに入れなおすと、アクセルペダルをベタ踏みした。リミッターを外したロードスターは190までしか記されていないメーターを振り切った。