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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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 ハーレムの教会。生まれて始めてゴスペルを見た。聞いた。感動で涙が流れた。隣の席の見知らぬ老婆が、僕を抱きしめてくれた。教会を出る時に、開演前に会ったマイケルと出くわした。僕が涙を浮かべながらその感動を述べると、マイケルが抱きしめてくれた。その妻のアイシャも抱きしめてくれた。
「はじめ!気をつけて帰るんだよ・・・ここはハーレムなんだ!」
ニューヨークでは流しのタクシーなど皆無だ。安全な通りまで走るしかない。
「ありがとう!プラザまで走るよ!」
「幸運を!」
「God Bless!」
 僕は日本にいる恭子の顔を思い浮かべながら、セントラルパークの脇道を真っ直ぐに南へ進んだ。崎戸の事が思い出された。僕は走り出した。
 夏の空。聳え立つ、彼方の動かない入道雲。青空の向こうには恭子の笑顔。
 恭子はもうこの世にはいない。
 享年35歳。
 僕はいつも走り続けている。瞳を閉じて崎戸を想うと、いつも聞こえてくる。島のおばさんたちの声。

「はじめ〜!もっと、早く走れんとか〜〜がんばれ〜!はじめ、がんばれ〜!」
作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ