蒼空の向こう
第13章・ニューヨーク
1984年3月。
成田発のANA機がニューヨーク上空に差し掛かった。
現地時間で午後7時を回っている。アナウンスでマンハッタンの夜景が見える事を知らせてくれた。機体がゆっくりと右旋回しているのが体感できる。
小さな窓にニューヨーク、マンハッタンの夜景が見えた。
僕は体が震えた。
正規留学ではなくパーソンズのオープンスクールを選んだ。
賢治とルームシェアでマンハッタンにアパートを借りた。マンハッタンの家賃の高さには驚いたが、それも自己投資だと自分を納得させた。
手続きは全て賢治がやってくれている。ケネディ空港に迎えに来てくれる事になっていた。
10年・・・・夢を描いてから丁度10年で辿り着いたスタート地点だ。
僕はニューヨークで沢山の「本物」を見た。そして、沢山の人と出会った。
1年が過ぎ、ニューヨークは厳しい冬。僕はコートの襟を立て、五番街を歩いていた。
この時期は観光客も少ない。左手にプラザホテルがある。僕には縁の無い高級ホテルだ。右手にはFAO、有名なトイ・ストアがある。通りの腋には観光客相手の馬車が客待ちで退屈そうにしている。
通りを横切るとセントラルパークに足を踏み入れた。リスが目の前を横切った。植え込みの側にも佇んでいる。僕はポケットから落花生を一つ取り出して放り投げた。
「すまんな・・・何も無いんだよ。これでガマンしてくれ