蒼空の向こう
「おはようございます!」
「いつもすまんな、はじめ。健がおらんから、大変やろ?」
「大丈夫ですよ。もうすぐ、バイトの勝っちゃんも来ますから・・・」
「そうか・・・はじめ。ちょっといいか?」
「ちょっといいか?」・・・は重要な話があるという事だ。僕は包丁を置くと前掛けを外して座りなおし、膝を正した。
「大将・・・何か?」
「うん・・・・はじめ。いくつになった?」
「25です」
「そうか・・・もうそんなになるか・・・はじめ。30まで待てんか?そしたら、店ば一軒、出しちゃる」
「・・・・・ありがとうございます。僕は此処で・・・いや、此処がいいですから。此処で頑張らせてください」
「そうか、そうか・・・居てくれるか。話はそれだけたい。恭子も頼むぞ。じゃあな」
大将は大きな体を揺らしながら出て行った。
ずっと居てくれると思っていた健さんが辞めた事で不安が過ぎったのだと思う。それ程、健さんの退職と出店は突然だったのだ。
僕はテーブルの上のセヴンスターに手を伸ばした。
ジッポライターで火を点けると深く吸い込んだ。