蒼空の向こう
「だめ?」
「一緒に行く」
「散らかってますよ」
「全然、平気」
「・・・ですか」
「行こっ!」
屈託が無い。
僕は手を引かれて、階段を上った。
僕の部屋は二階の突き当たりだ。ポケットから鍵を取りだす。
「貸して!・・・開けてあげる」
恭子は僕から鍵を奪い取ると、ロックを外して先に中に入った。
やれやれ・・・と思う。
僕から画材の入った袋をもぎ取り、下駄箱の上に置いた。
突然、恭子が胸に飛び込んできた。
唇を奪われた。
僕は予想しなかった展開に動揺しつつも恭子をゆっくりと抱きしめた。
これがきっかけで六年間も、このアパートで暮らすことになる。