蒼空の向こう
「もうっ。はじめ君、来なさいよ。ほらっ」
強引に手を引かれた。僕は恭子の友人に紹介された。
「家で板前さんをやっている、はじめ君よ。さっき話していたでしょう」
「天才画家の板前さんね」
「そんなんじゃないですよ・・・お嬢さんが言ったんですね・・違いますから」
「私が思うんだから良いじゃない。こっちは、香織。山崎香織。で、こっちが多田悦子。えっちゃん」
「はじめまして、はじめです。」
女が三人寄れば何かと煩い。僕は、質問攻めに閉口した。そろそろ、退散しようと思っていた。
「はじめ君、今日はお買い物?」
「あ、はい・・いえ・・ただ、ブラっと」
「ふーん。じゃあ、もう帰るの?」
「はい。そろそろ帰ろうかなと思っていました」
「じゃあ、一緒に帰りましょう」
「あーっ。恭子はいいなぁ」
「そうだ、そうだ・・ずるいよぉ」
「ふふっ。だって仕方ないじゃない」