蒼空の向こう
第11章・恭子お嬢様
僕はジーパンに麻のジャケットを羽織ると、街に出た。
デパートでブランド物のスカーフを買い、封筒を添えて、宅配便で送ってもらう事にした。ささやかだが母へのプレゼントを買った。封筒には妹へのお小遣いを入れた。店員の「贈り物ですか?」という言葉に赤面してしまった。
福岡は、九州でも最大の街だけあって繁華街は人で賑わっている。田舎者の僕にとって、全てが真新しかった。カフェに入ってコーヒーを啜ると、セヴンスターに火を点けて深く吸い込んだ。突然、後ろから声をかけられた。僕は良く突然に声を掛けられる。
「はじめ君?はじめ君でしょう!」
振りかえると「香月」の娘、恭子が奥の席に居たのだ。友人と一緒のようだ。笑顔で僕の下に駆け寄ってきた。
「ああ、お嬢さん。こんにちは」
「お嬢さんは止してよ。一人なの?」
「はい。勿論です」
「良かったら向うに来ない?友達を紹介するわ」
「あ、いえ。お邪魔でしょうから」
「はじめ君。そんなに歳は変わらないのだから、いい加減にその言葉遣いは止めてくれないかな」
「はい。申し訳ありません」