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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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 こうして、僕の板前修業が始まるのである。
 人の出会いの「不思議」である。
 あの、天神3丁目の自動販売機の前に僕が立たなければ・・・大将がタバコを吸いに表に出なければ、この出会いは無かっただろう。

 帰り際、大将が日当だと言って1万円をくれた。僕は深々と頭を下げた。

 僕はアパートに向かって走った。
 途中、二つの橋を渡る。弁天橋と大黒橋。大黒橋の真ん中で立ち止まった。苦しくなって膝を折る。肩で息をする。立ち上がって水面を見た。
 中洲のネオンが煌いていた。見上げても街が明るすぎて星は見えない。

 満月だったか、三日月だったか・・・もう覚えていない。
ただ、見上げたその先に、とても優しい月が上っていた事だけは記憶に残っている。

作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ