蒼空の向こう
「崎戸!?崎戸島か!」
「ご存知なんですか?」
「知っとるも、何も・・・はじめ君。松尾巧って知らんね。アンタより随分上と思うばってん。崎戸の人やけどね・・・」
僕はしばし考えた。松尾・・・松尾巧・・・兄の中学時代の同級生にそういう人がいた記憶がある。
「蛎の浦の人ですか?松尾 巧さん」
「そう!・・そうたい!蛎の浦の松尾巧たい!知っとるんね!」
「兄の中学の同級生です。四つ先輩になりますけど」
「はっあー!また奇遇やねぇ〜巧君は姪浜の魚屋で働きよるたい。うちも時々世話になっとる。はぁ〜〜驚きやね〜ここにも時々来るよ」
「そうなんですか・・・・でも、僕が小学生の時に何度か会った事がある程度ですから・・・あまり・・・」
「はじめ君。どうね・・・うちで働かんね。給料はそこまで出んかも知れんけど、飯は食い放題やし・・・只ばい」
不覚にも飯に釣られた。
「雇って頂けるんですか?」
「伊達に店、しとらんたいね・・・人ば見る目はあるたい。うちで働きんしゃい!」
就職が決まった。