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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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「はい。ありがとうございます」

「うんうん・・・あと、怪我・・・せんごとな。一銭も出らんぞ」

 クラクションの音。
 手配師のミニバスがやってきた。
 運転席の後ろに乗り込む。
 車の中が汗と酒とタバコの匂いで充満した。

 須崎町の問屋街。
 倉庫の2階に部屋を借りていた。
 6帖一間。小さな流しがあるだけだ。壁はベニヤ板張りで、小さな窓がひとつ。トイレと洗面は共同。勿論、風呂などついていない。ビルの間にあるため1年中、光は射さない。だが、家賃は8000円と格安だった。
 部屋は4つ。 住人は魚市場に勤める兄さん。中洲のスナック嬢。印刷工、そして僕。 住めば都だ。

 アパートの前の「食堂ひろ」で胃袋を満たしてから銭湯へ行く。
 風呂から戻り、タバコを吸いながらスケッチブックに落書きをする。
 落書きしながら同級生の事を想った。
 今頃、みんなどうしてるだろうか。クラスメイトの顔が次々にスライドしていく。

 美千子の事を想った。
 クラスが一緒になった事は無かった。小柄で可愛い子だった。
 漆黒の瞳。マッチ棒が乗りそうな睫毛。細くてしなやかな長い髪。ふっくらとした唇。小さな手。細い指。桜貝のような爪。白い肌。そして・・・・・柔らかい乳房。
 
作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ