蒼空の向こう
5時、作業が終わる。
手配師が迎えに来るまで現場の仮設事務所で待つ。
水が入った薬缶と日本酒が2升、簡易テーブルの上に置いてあった。
皆、薬缶には目もくれず、競う様に一升瓶を掴む。
トクトクと湯飲みに注ぎ、零さないように口から近づけ、幸せそうに飲み干す。
「兄ちゃんも、呑まんかい!」
40代だろうか・・小柄だがガッチリした体躯の男が、僕に湯飲みを差し出した。分厚くゴツゴツした手がこの仕事のキャリアを物語っていた。
真っ赤に日焼けした顔。広い額に土埃が張り付いていた。よく見る顔だ。
僕は、湯飲みを受け取ると、日本酒をなみなみと注いで一気に飲み干した。
カラカラになった喉を日本酒が通り抜けていく。
甘くて・・・旨い!と思った。
「ほれ、もう一杯、呑めさ」
今度は男が注いでくれた。
「ありがとうございます」
「兄ちゃん、最近、良ぉ見るばってん、どっから流れて来たんな?」
「流れて?」
「おう!・・若かけど、素人じゃなかろうが・・・」
「ええ・・・ちょっと他で・・・・・日当が良いって聞いたもので」
「金な・・・ばって、若かとになぁ・・・まぁ、たまに休まんと体がダメんなるぞ」