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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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 5時、作業が終わる。
 手配師が迎えに来るまで現場の仮設事務所で待つ。
 水が入った薬缶と日本酒が2升、簡易テーブルの上に置いてあった。
 皆、薬缶には目もくれず、競う様に一升瓶を掴む。
 トクトクと湯飲みに注ぎ、零さないように口から近づけ、幸せそうに飲み干す。

「兄ちゃんも、呑まんかい!」

40代だろうか・・小柄だがガッチリした体躯の男が、僕に湯飲みを差し出した。分厚くゴツゴツした手がこの仕事のキャリアを物語っていた。
 真っ赤に日焼けした顔。広い額に土埃が張り付いていた。よく見る顔だ。
 僕は、湯飲みを受け取ると、日本酒をなみなみと注いで一気に飲み干した。
 カラカラになった喉を日本酒が通り抜けていく。
 甘くて・・・旨い!と思った。

「ほれ、もう一杯、呑めさ」

 今度は男が注いでくれた。

「ありがとうございます」

「兄ちゃん、最近、良ぉ見るばってん、どっから流れて来たんな?」

「流れて?」

「おう!・・若かけど、素人じゃなかろうが・・・」

「ええ・・・ちょっと他で・・・・・日当が良いって聞いたもので」

「金な・・・ばって、若かとになぁ・・・まぁ、たまに休まんと体がダメんなるぞ」

作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ