蒼空の向こう
「大丈夫って!」
「ごめんね・・・はじめ」
「なんば、言いよると・・・そろそろバスが出るけん」
「はじめ・・・」
「はじめにいちゃん・・・・」
「遥・・・お母さん・・・頼むぞ」
「うん!・・・まかせんね!・・・いってらっしゃい!はじめにいちゃん!」
「うん。じゃあ・・・」
妹の遥に肩を抱かれながら泣き崩れる母を見るのが辛かった。
僕はバスに乗り込むと運転手の真後ろに座った。
母と妹が手をゆっくり振っている。
僕は笑顔を作ってそれに応えた。
フェリーのデッキの上。
晴れ渡っている。
何度、このデッキの上に立った事だろう。
4月の潮風は肌寒かった。
水平線の上が霞んで見えた。