蒼空の向こう
言葉では例えようのない、恩。
それは、言われなくても痛いほど感じている。
自分は親不孝だと思った。
僕は自室に正座して、壁越しに土下座をした。
額を床に擦り付けて謝った。
「我侭を許してください・・・。」涙が畳を叩く微かな音が耳についた。
「アメリカへ行く。ニューヨークのアートスクールで学ぶ」・・・僕の答えは一つしかなかった。
それにはお金がいる。しかも、早く必要だった。
親には頼めない。就職しても当時の高卒の給料ではとうてい夢がかないそうになかった。
いつになるか分からない。
僕は極端な道を選んだ。
島を出る。
当日、妹と母親だけがバス停まで見送りに来てくれた。
「はじめ・・・・・ほんとに大丈夫ね?」
「心配いりませんよ、お母さん。同級生の川村・・・あいつの叔父さんがレストランをやってるから、そこで働けるって・・・何度も言ったよ」
「川村君やろう・・・それは聞いたけど・・・」
「博多駅に川村が迎えに来てくれるけん。心配なかよ」
「そうね・・・・」