蒼空の向こう
「な、な、なんと・・・・惨い事・・・」
「爺さん!一体、どうした!」
「惨い事を・・・」
腰を抜かして木箱の中を凝視する森一の背中越しに、賢三が木箱を覗いた。そして、森一と同じく腰を抜かした。
「何て事だ・・・・」
木箱の中。柔らかい毛布に包まれた赤ん坊が入っていた。目を閉じ、じっとして動かない。
「し・・・死んでいるのか・・・?捨て子か?」
「分からん・・・賢三さん・・・確かめろ」
「爺さんが確かめてくれ」
「ワシは嫌じゃ。こんな幼子・・・もし死んでいたら悲しくてやりきれん!賢三さん、頼む。この子が息をしているか・・・確かめてくれ」
森一にそう言われ、賢三は這うように、恐る恐る木箱を覗き込んだ。船が揺れる為に中々様子が判らない。
「爺さん・・・この子」
「生きているか?・・・それとも・・・」
「生きているぞ!微かに息をしている!大変だ!」