蒼空の向こう
潮目の手前で波が小さくなっている。そこに小さな伝馬船が漂っているのが見えた。
「おや?・・・あれは見かけない小船だな」
「うん・・・何処から流されてきたのかな・・・誰も乗っていないようだ」
「賢三さんよ、あの船を曳いて帰ろうか」
「そうだな。じゃあ、船を回すぞ」
「ほい来た」
2人は足を踏ん張り、櫓を漕いだ。伝馬船が近づいてくる。
賢三は伝馬船とぶつかる寸前で櫓を捻った。すると、船はするすると伝馬船に横付けした。森一が70を超えたとは思えない身軽さで伝馬船に飛び乗った。手にはロープを持っている。
「よし!賢三さんよ。縄を艫に結んでくれ!」
「おいさ!」
賢三は森一が投げたロープを艫に繋ぐと自分も伝馬船に飛び乗った。
船の舳先に木箱がある。蓋がしてあり、横には小さな穴が幾つも開いていた。
「その箱には何が入っているのかね」
「さあな・・・開けて見るか」
「うん、爺さん。開けてみてくれ」
森一は腰を屈めると木箱の蓋を開けた。蓋を開けて腰を抜かした。