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つゆかわはじめ
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novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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第5章・汚された勲章
 僕はその日も走っていた。

 重いランドセルから教科書が飛び出しそうだ。
 胸に一枚の紙切れを抱いていた。
 家に飛び込んだ。

「母さん!母さんっ・・・いるっ!」

「おるよ〜・・・どげんしたとね?」

「はい!・・・これ!」

 僕は母に紙切れを差し出した。
 母はそれをまじまじと見つめながら微笑んだ。
僕はじれったかった。母はいつでもそうなのだが、感情の抑揚が極めて緩やかで、ワンテンポもツーテンポも遅れる。母が慌てふためいたところを見たことが無い。やはり、祖父に似たのだろうか・・・。

「そうね・・・そうね・・・金賞ば取ったとね。すごかね〜。そうね〜〜。」

「うん」

「はよう、じいちゃんにも見せに行ってこんね」

「うん!」

 絵画コンクール金賞。
 長崎県展の一環として公募された絵画コンクール。全校生徒が出品していた。そのコンクールで金賞を獲った。朝礼で表彰された。お立ち台にあがり、授賞式があった。
 
作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ