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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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蒼空の向こう

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 伝馬船に飛び乗って船底の戸板を開いた。凝縮した潮の香りが鼻腔を刺激する。フナムシがいたので指で弾き飛ばした。弾き飛ばされたフナムシは海に落ちたが、こっち向かって泳いで来る。どうせまた上がってきて伝馬船で暮らすのだろう。放っておいた。

 光を遮った生けすには十匹ほどのイセエビが静かに蠢いていた。僕は最大級のイセエビと格闘した。生けすから掴み出されたイセエビは「ギイッ!・・・ギィ!」と鳴きながら暴れる。落としたら大変だ。
 二匹のイセエビを素早く網袋に移して口を絞めた。
 船から慎重に飛び降りると、家へ一目散に走る。ランドセルに用はない。

 今日も聞こえる、島のおばさん達の声援。

「はじめ〜〜!今日はごちそうやなぁ!・・・ほらっ!もっと早く走れんとかぁ〜〜!」

作品名:蒼空の向こう 作家名:つゆかわはじめ