蒼空の向こう
僕は、1階の事務室に顔を出した。吉田係長が渋い顔で帳簿を見ていたが、僕に気づくと笑顔を見せた。吉田大紋は、先にも書いたが、現役のヤクザを兄に持つ、一見癒し系、実は怖い人物だ。
今回、エージェントに情報をリークした業者の洗い出しに、その「兄」の力を借りると息巻いていたが、社長から宥められた様で、憤怒の矛先を向ける相手を無くし、意気消沈していた。
「吉田係長・・・」
「あっ、先生・・・すみませんね〜何だか、こんな事に巻き込んじゃって・・・」
「僕は、全然、大丈夫なんですけど・・・パートさんの仕事はどうなんですか?」
「来週から、ボチボチ出荷を始めるから、呼び戻しますよ・・・心配してくれてありがとうございます」
「そうですか・・・安心しました」
「先生・・・今日は、もう帰って良いですよ・・・末永の姿も見えないようだし・・・事務所も5時には閉めますから」
「そうですか・・・では、お言葉に甘えて・・・今日は、これで失礼します」
「ええ・・・また、頑張りましょう!」
「そうですね・・・頑張りましょう」
時計を見たら、4時少し前だった。
バッグをピックアップの助手席に放ると、エンジンキーをまわした。
僕は、チャーリーの待つ、我が家へ車を走らせた。



