蒼空の向こう
「飛ぶ鳥も落ち、草木もなびくばかり也」
H社は破竹の勢いで業績を伸ばした。理由があった。カメラ小僧。
H社は、カメラ小僧から直接ネガを買い漁り、プリント屋に大量発注したのだ。当然、数百万枚と言う注文に、プリント屋が対応できるはずもない。
札束を見せ、夢を描かせて、設備投資をさせた。売り上げが、うなぎ上りで伸びていく。
それまで、年商数億の売り上げは、瞬く間にその10倍に跳ね上がった。
しかし、右肩上がりの売り上げとは反対に、信用が急激に落ちていった。
原因は「掟破り」である。非合法の部分がある業界は、暗黙の了解の下で成り立っている部分がある。相手の領域を侵せば、仕返しを喰らう。
こんな事が長く続くはずがない僕は一抹の不安を感じていた。
しかし、会社は俄(にわか)景気で活気に溢れ、事情を知らないパートタイマーは、時給が上がった事実だけで喜んでいた。
慰労会という名目で、度々、宴会が催された。
宴会と言っても、ホテルの宴会場を借り切っての本格的な立食パーティだ。パートタイマーは、ここぞとばかりに美しいドレスに身を包んで参加していた。
僕は慰労会の席で、馴染みの人を見つけた。
西田社長である。西田社長は僕をH社に推挙した人物だが、その見返りとして商品の製造を請け負う仕事を得た。
西田社長に出す仕事は僕が選んだ。プロパーのみを依頼した。月にして100万円程の額だが、法的に安全な商材だ。
「久しぶりです・・・西田社長」
「やぁ!はじめ君・・・大活躍だね・・・嬉しいよ」



