神様ソウル3
「どうだった?」
「見つかりましたよ、治す方法」
「え」
なんだその「え」は。
「レイカの力と対極の性質を持つ私の力を課長に注いであげれば元に戻すことができるみたいです」
「へー」
「ただ、一つ問題がありまして」
「なんだ」
「その力を送り込む方法が……キス、なんですよね」
「テミスとキス……?」
「そういうことです」
「……絶対にイヤなんだけど」
課長は私の腕を振りほどき退いて距離をとった。
「レイカはどこに行った?まだ部屋の外にいるのか?」
「レイカとは極力接触を避けるようにって言ったでしょう」 「でも傍にいないと不安なんだもん」
課長は唇を尖らせて言った。……先生の言っていたこともある、とりあえずレイカを連れて来よう。彼女からも詳しく話を聞いておきたいし。
「家からは追い出していないので部屋の外にいるはずです。いま!私が連れて来るので。そこで待っていてください」
話の途中で立ち上がった課長を制して、私は一人で部屋を出た。
「レイカぁ~……」
「お兄ちゃ~ん……」
リビングのソファの上。課長とレイカに挟まれた状態で三人並んで座っている。
「それで。レイカ、あなたは一体誰から命を受けてこの世界に来たの?」
「だから知らないんだってば。お姉ちゃんに突然人間界に行きなさいって言われて転送施設に連れていかれたんだから」
「そのお姉ちゃんっていうのは?」
「研究者だよ。運命とか業とか徳とか、そういうの調べてる。下っ端でこき使われてるみたいだけど」
「…………」
怪しい。だが、この子の言ってることが仮に嘘だとしても私にそれを見破る術はない。これ以上の質問は無意味か……。
「テミス、あんまりレイカをいじめんなよ……」
課長がためらいがちに言った。レイカの能力のせいとはいえ、こういう課長を見るのはあまり気分が良くない。というかイラつく。
とりあえずやらなくてはならないことは、キスだ。何があろうとキス。課長の魂を地獄に奪われることなんてあってはならない。遅かれ早かれしなくてはいけないのだ。
「……?」
課長は自分の顔をじっと見つめる私に気づいて、首を傾げた。
……とりあえず今は止めておこう。今度だ今度。レイカもいるし。うんうん。