神様ソウル3
「だーーー!!流星キーーーーック!!!」
僕とレイカの唇が触れ合おうとするその刹那、叫び声を上げながら窓ガラスを突き破ってテミスが部屋に現れた。
「ふー。朝のヒーロー番組を欠かさず見ていたことが役に立ったわ……。おいそこの娘、早く課長の上からどきなさい」
「え……やだ」
レイカが僕の首に手を回しぴとっと体をくっつける。やわらかい。そういえば下着は付けてないとかいってたっけ。
「やーだじゃなーい!ほら課長もそんな小娘にされるがままになってないで!!そいつがどんな奴なのか知ってるんですか!」
「どういうことだ?」
「そいつはね、この世界の住民じゃないんですよ」
「またか……なんでそんなのばっかり」
「何を今更。課長の周りに普通の人間が寄ってくるわけないじゃないですか」
「……言われてみれば」
「とにかく。そこの女はこの世界の者じゃない。言うなれば私と同類です」
「テミスと同じ世界の出身なのか」
「私の世界とは別にもう一つ世界があるんですよ。役割的に人間界でいう天国と地獄に似てるのでそうやって呼ばれることが多いです。私は天国、その子は地獄」
「……むー」
レイカが小さな声で唸るのが聞こえた。
「保守的な考え方の天界人に対して、地獄の人間は積極的に運命を変えたり操ったりすることに抵抗がありません。その女の子もそういった力を持ってます」
「具体的に言うとどんな力なんだ?」
「自分の都合のいいような出来事が起こったり異様に運が良かったり、ですね。徳の高い課長の力と少し似てますが自分の好きな時に運命を変えてしまえるというのが大きな違いです。血筋によって細かい違いはありますが」
「気づかなかったな。この子にそんな力があったなんて」
「割と露骨に機能してますよ。ラブコメ漫画レベルのハプニングメーカー体質。それもお色気方面限定の。自分を周りから魅力的に見えるようにしたり、近づいたり触れたりした者の運命を書き換えてしまうこともできます。その子、課長の心を奪うのが目的でこちらに送り込まれて来たんです」
「そうだったのか」
「危ないところだったんですよ。もし課長が今その子とちゅーしちゃってたら魂まで支配されて取り返しのつかないことになってたんですから」
…………。
「へぇー」
「もし課長みたいな位の高い魂が悪魔と契約するなんてことになったら事件です。どんな悪巧みに利用されるかわかったもんじゃありません」
「あのさぁ」
「こうして彼女の危険性を理解したからといって、今のようなことが絶対に起こらないとは言い切れません。これから先、彼女の前では気を緩めないように常に意識してくださいね」
「テミスさん」
「はい、なんでしょう」
「実はですね。先程ですね……してしまったんですよね。口づけ的なものを」
「……誰とですか」
「この子とです」
「まじですか」
「まじです」
「……やばいですね。割と真面目に」
「支配されるって、どんな感じなんでしょう……」
「この子の命令に従うことに喜びを感じるようになります。魂も支配されるので死んだ後も好きなようにされちゃいます」
「どうすればいいのかな……」
「心を奪われてる以上、課長ができることは少ないですね……私が頑張るしかないですね」
「すいません……お願いします」
「その姿勢のまま言われるとちょっとイラっときますね……」
僕はあわてて自分の上に跨がったレイカの腰に回した腕を解いた。