神様ソウル3
脱衣所から出ると、レイカはリビングのソファの端っこにちょこんと座っていた。タオルを肩に掛け、濡れた髪を乾かしている。
「レイカ」
「ん?」
レイカと並んでソファに腰掛ける。レイカが少しだけこちらに体を寄せた。
「……どうして一人であんなところにいたんだ?」
「えー……色々と訳ありでして」
「家出とか?」
「家出というか家から放り出されたって感じかな……」
「え」
「ねえお兄ちゃんお願い、今日だけでいいから泊めて欲しいの」
レイカが僕の腕をぎゅうっと掴み懇願する。
「それくらいは全く構わないけど、その後はどうするつもり?」
「……今は何も考えたくない」
レイカは暗い表情で答えた。訳ありと言っていたし、今のレイカに家に帰ることを促すのは少し酷かもしれない。
「レイカ、もう時間も遅いし今日はそろそろ寝ようか。難しいことは後にしよう。ね」
「……んー」
レイカは曖昧な返事をすると、するっと僕の方に倒れ込んできた。
「レイカ?」
「頭痛い……」
「大丈夫?なんかあったかいもの持ってこようか?」
「いい……でも休みたい」
「じゃあしばらく僕のベッドを貸すよ。部屋に行こう」
「いいの?」
「いいに決まってるよ。ほら、立てる?つかまって」
「ありがと……わ」
レイカが突然体勢を崩して前のめりに倒れ込む。彼女の体を引き上げようと重心を後ろに傾けていた僕も彼女の下敷きになるようにして尻餅をついた。
「いったー。大丈夫?」
「うん……」
「良かった。それじゃ部屋に行こうか」
「……ん」
返事はするが、何故か僕の上に乗っかったまま動こうとしない。
「……お兄ちゃん。どうしてこんなに良くしてくれるの?」
「そりゃ女の子がこんな時間に一人で雨に打たれてたら声くらい掛けるよ」
「私じゃなくても?こうやってお風呂入れてあげたり服貸してあげたりした?」
「…………」
レイカの顔が徐々に近づいてくる。
「……お兄ちゃん、顔が赤いよ?」
「ん?そうかな」
「心臓も……ほら、どくどくって」
レイカが僕の胸に手を添える。皮膚がぞくりと粟立つのを感じた。
「私、お兄ちゃんのことよろこばせてあげたいなぁ」
レイカが冷たい笑みを浮かべる。何かおかしい。体が動かない。
顔と顔がどんどんと近づいていく。レイカが目つむり唇を突き出す。それに吸い寄せられるように僕の唇が近づいていって、レイカの唇と……。