あの夏、キミがいた。
同じクラスに、彼女と同じ陸上部に所属する、ノッポのハイジャンプ少女がいたんだ。そして、彼女は自分が長身なことを気にするあまり、好きな相手に告白できずにいる
―それが彼女の幼馴染K。―
一方、彼女に想いを寄せられているそいつはその事に薄々気付いてはいるものの、やはり彼女よりも低い自らの身長が気になり、自信が持てず結果気持ちにこたえられないで居る
―それが僕の従兄弟A。―
僕たちはお互い、その二人からいろいろ相談されて、その辺をなんとかしてやりたいと常々、思ってはいた、それは嘘じゃなかった。だから、
「あの二人をどうしたらいいかって考えて……でさ、お前って頭いいし、生徒会長だったりするだろ?」
「え~、頭いくないってー!まぁ、生徒会長はそのとおりだけど、それがどしたの?」
よく動くキレイな形の唇から覗く、真っ白な歯が眩しい。
「でさ、オレはバカで不良なわけだ。」
「え~、バカじゃないよ!勉強しないだけでしょ、キミは……中学の頃は私よりデキたじゃない?自分で不良なんて言ってさー、でも確かにその染めた髪はちょっとね。なんだっけ?アニメの……サイヤ人?みたいだよキミ、フフフ。」
相変わらず俯き加減で話す僕の顔を覗き込むように、そして少し小首を傾げ、まるで弟かなにかを諭すような口調で喋る彼女の、その澄んだ声と言葉がミゾオチのあたりに突き刺さる。
「そ、そんなことはどーでもいいんだよ!で、お祭りの日にさ、そんなオレとお前が、その……」
「うん?私とキミが何?」
いつの間にか、息がかかるほど近くに歩み寄った彼女が真っ直ぐ僕を見つめて問う。
―折れる、心が折れそうだ、やっぱやめよ―
そのときだった。
作品名:あの夏、キミがいた。 作家名:ヴィンセント