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ヴィンセント
ヴィンセント
novelistID. 41447
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あの夏、キミがいた。

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 それから僕等は、神社の鳥居の下で待ち合わせたA達と落ち合った。
手を繋いで現れた僕らに、二人は最初心底驚いた様子でそれぞれにコソコソと、いろいろ聞いてきた。
 でも、僕等はその間もずーっと手を繋いだまま、お互いの友人に向けてその訳を堂々と話した。

「な、他の奴らからどう思われても関係ないんだよ、お前もちょっとくらいのこと気にするなよ。」

 さっきまですれ違う人々の視線が気になって仕方なかったヤツのセリフとは思えなかったがとにかく僕はもう、彼女と繋いだ手の温もりの確かさだけでこの世の全てを敵にまわしても構わない、それくらい堂々とした自信に満ち溢れていた。

 そして僕たち4人は夜店の屋台をあれこれ見て回った。たこやきや焼きそばの香ばしい香りと、りんご飴やわたあめの甘ったるい香りに混じり時々、誰かが鳴らすロケット花火や爆竹の火薬臭が漂う夏祭り独特のにおい。
 そんな、いつもとは違う空間の中でごく自然に、手が触れ合いそうな距離にいた彼と彼女はいつのまにかしっかりとお互いの手を握り、楽しげに金魚すくいの屋台へと向かっていく。

「ね、ウマくいったねあの二人。見て、Kったらすごく嬉しそうだよ♪」

「ああ、Aもすごく楽しそうだし、よかったな。」

 僕たちは、金魚屋台の前ではしゃぐ二人からわざと遠ざかりながら、お互い顔を見合わせてクスッと笑った

―あ、初めて自然に彼女と笑い合えた―

けどそれは友達の恋を成就させた故の満足感、二人を幸せにしてやれたから?

 彼女の笑顔が、神社の境内にぶらさがるたくさんの提燈灯りの中で美しく輝く。

―違う!違うんだ!!僕は、今キミとこうしていられることが心底嬉しくて、キミと手を繋いで歩けたことが嬉しくて笑っているんだ!!だから―