ちぎれた世界にて
第8章 旅の終わり
「おい!!! 大丈夫か!!!」
大声により、石井たちは目を覚ました……。彼らの目の前には、数人の救助隊員たちがいた……。
空は夕焼けに染まり始めており、座礁した豪華客船の周りを緊急車両が取り囲んでいた……。船内を、救助隊員や警察官たちが捜索していた。
「頭のコブ以外にケガはないか?」
救助隊員たちが石井たちに具合を尋ねた。
「……大丈夫そうです」
石井がそう答えると、救助隊員たちはほっとしていた。そして、
「この船で何があったんだ? 君たち以外に生存者がいないようなんだが?」
こう言った……。石井と高倉は顔を見合わせ、
「あの、船を操縦するところに4人いたはずなんですけど」
石井が尋ねた。
「船長さんたちなら、亡くなられていたよ」
別の救助隊員が悲しそうに言った。
「いえ、この船の人じゃなくて、俺たちと同じ旅行者なんです」
「20代の男女が4人いたはずなんですよ!」
石井と高倉がそう言うと、救助隊員たちは首をかしげ、
「じゃあ、もう一度くまなく探してみるよ。君たちは念のため、病院に行ってもらうよ」
そう言うと、どこかに無線連絡を始めた。
石井たちは、それからすぐに、船から救急車に乗せられて、この悪夢のような旅を終えた……。
きれいな夕日が、西の空の向こうへと沈もうとしていた……。それは、昼の世界から夜の世界へと変わるときだった……。