ちぎれた世界にて
「どうして、その子も連れてきたのよ!?」
危険なのに、石井が女の子を連れてきたことを、高倉が責めた。
「いやなんとなく」
石井が女の子をわざわざ連れてきたのは、尾張たちを恐れてのことだった……。
『ぶつかるときになったら、絶対に伏せて、衝撃に備えろ!!!』
船首に向かって進んでいると、尾張の声が船首放送で聞こえてきた。
『あと1分ほどで「接岸」だ!!! 気をつけろよ!!! しっかりやるんだぞ!!!』
そこで船内放送は終わった……。
船首に着いた石井たちは、拡声器をオンにした。そして、石井と高倉は、前方の港に向かって、
「危険です!!! この船から離れてください!!!」
と、何度も叫びまくった。
港の埠頭にいた人々は、2人の拡声器の声に反応して、彼らが乗っている船を見た。そして、その船が埠頭にぶつかるとわかると、
「きゃーーー!!!」
「うわーーー!!!」
一斉に逃げ出した……。すぐに港中がパニックになったのは言うまでもない……。
船はあっという間に埠頭のすぐそばまで達し、
「伏せろ!!!」
石井はそう叫ぶと、高倉と女の子を抱きかかえながら甲板に伏せた。そして、
ガリガリガリガリガリガリ!!!
船が埠頭に激突し、凄まじい音と振動と衝撃が襲ってきた……。石井たちは伏せていたが、衝撃に飛ばされ、3人いっしょに手すりに頭をぶつけてしまった……。そして、3人とも気絶したのだった……。