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ちぎれた世界にて

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「こ…殺される」

 石井たちの船が「入港」したニュースをテレビで観た富永は、肩を震わせながら叫んだ…。彼がいたのは、防衛省の自分のオフィスだ。
「ここにいても駄目だ」
そう呟いた彼は、急いで手荷物をまとめ、オフィスから飛び出した。そして、玄関に止まっていたタクシーに素早く乗りこむと、
「今すぐ成田空港に向かえ!!!」
運転手にそう叫んだ。
「は…はい」
富永の必死な顔に運転手は驚いていた……。

 富永を乗せたタクシーは、防衛省の敷地を出て成田空港へと向かった。彼は、アメリカに逃げるつもりだった。ほとぼりが冷めるまでそこにいるのだ。しかし、夏休みのため、一般道は混んでいた……。
「追加料金を払うから、高速に乗れ!!!」
「わ…わかりました。大事なお仕事なんですね?」
「うるさい!!! おまえには関係無い!!!」
「す…すみません」
タクシーは首都高速を走り始めた。幸い、道路はすいていた。タクシーが成田空港に近づくにつれて、富永は安心していくことができた。

   パンパンパ−ン!!!

 だが、突然、右の追い越し車線を走っていたプリウスから銃撃をくわえられた……。銃弾は右の窓ガラスを貫通し、運転手の息の根を止めた……。運転手を失ったタクシーは、そのままのスピードで蛇行走行を始め、富永は悲鳴をあげた。
 襲撃してきたのは、尾張たちだった……。船から逃げた彼らは、富永を暗殺しにきたのだ……。尾張たちからは、しっかりとした殺気を感じられた……。

   カチャン!

 割れた窓から手榴弾が入ってきた……。プリウスに乗っていた誰かから投げ込まれた物で、もちろんピンは抜かれていた……。プリウスは速度を上げ、猛スピードで走り始める。富永は必死の形相で、手榴弾を車外へと放り投げようとしていたが、焦ってしまい、手榴弾をつかむことができなかった……。タクシーから逃げれば良かったのだが、彼はそれを思いつかなかったのだ……。
 そして、猛スピードで走るプリウスが、富永からは見えない道路の向こうへと消えたとき、

   ドカーーーン!!!

 富永が乗ったタクシーは爆発し、その勢いで飛び上がった車体は、中央分離帯を越え、対抗車線を走ってきた大型トレーラーに衝突した……。その瞬間、タクシーは火の玉となり、道路上をガシャンガシャンと転がっていった……。

 ひしゃげて炎上しているタクシーの中にいる富永は、かすかな意識の中、自分の体が焼けていくのを感じていた……。とてつもない痛みを感じていたが、悲鳴をあげる力も既に失っていた……。
 そして、それからすぐに、何も感じなくなった……。

作品名:ちぎれた世界にて 作家名:やまさん