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ちぎれた世界にて

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第7章 接岸



『大変です!!! 減速できません!!!』

 翌日の昼過ぎ、その突然の船内放送に、ラウンジで昼寝していた尾張は叩き起こされることになった。尾張はブリッジに大急ぎで向かった。船は東京湾内に入っており、他の船がいくつも見える。
 石井たちの横を尾張が通り過ぎていく。石井たちはデッキで、もうすぐ家に帰れることに浮き足立っていたのだが、この船内放送と全速力で走っていった尾張から、不安に気持ちになった。
「私たちもついてこ!」
この旅行で積極的な性格になったのか、高倉がそう言い出した。
「オレたちがいても邪魔なだけだろ?」
尾張たちを警戒している石井はそう言ったが、高倉は女の子を連れ、山口を追いかけ始めた……。
「まったく!」
石井もその後を追う。



「あのときの爆発で壊れたんですよ!!!」
操縦舵を握っている男が、手榴弾を使った尾張に言う。
「まさか、そんなことぐらいで壊れるとはな」
船を減速できなくした犯人だといえる尾張は、平然とそう言った……。
 そのとき、石井たちがブリッジに入ってきた。
「なんで船長さんたちが死んでいるんだよ!!!」
石井が床で「寝ている」船長たちを見て叫んだ……。彼らはまだ知らなかったのだ。
「昨夜の戦闘の際、流れ弾に当たってしまってな」
尾張はそう言ったが、石井たちは信じていなかった……。
「減速できないとどうなるですか?」
高倉が尾張に問う。
「まあ、港に乗り上げるだろうな。港にいる奴がちょっと死ぬかもしれんが、まあ、「接岸」はできるから」
尾張は能天気そうに言う……。さっきの全力疾走はなんだったのかと、石井は思った。
「私たちにできることはないんですか?」
高倉がさらに問う。
 そのとき、船は大きな橋の下を通過し、前方に東京港が見えてきた……。
「そこのメガホンを使って、船の先から逃げるように呼びかけるんだ。かなり揺れるから気をつけろよ」
尾張は少し考えてから、壁にかけてある拡声器を指さして言った。
「行ってきます!!!」
高倉はそう言うと、拡声器を2つ取り、1つを石井に渡した。そして、拡声器を持ってブリッジから飛び出していった。
「じゃあ、行ってくる!!!」
石井は女の子を連れて、ブリッジを飛び出していった……。

「女の子をここに置いていかずに行ったっていうことは、オレたち信用されてませんよね?」
操縦舵を握っている金髪碧眼の男が、少しだけ悲しそうに言った……。
「オレたち4人だけで、あれだけの敵を撃退したんだから、怖がられるのは当然だよ。まあ、ちょうどよかったじゃないか」
尾張はどこか寂しそうにそう言うと、船内放送のマイクを手にした……。

作品名:ちぎれた世界にて 作家名:やまさん