ちぎれた世界にて
「ああ、こんなところにいたのか!?」
石井が、高倉と女の子が待つ客室に戻っていたとき、尾張と遭遇した。尾張は、客室にいた高倉と女の子に安全を告げてきたらしい。
「本当に戦いは終わったんですか?」
石井は警戒しながら、尾張に尋ねた。
「……たぶん、終わった。おまえらは東京に着くまで、あの部屋で寝てていいぞ」
彼は、石井の突然の丁寧口調を不審そうに思いながら答えた。そして、彼はそのままどこかに立ち去っていった。
石井は、立ち去っていく尾張をしっかりと見送ると、高倉と女の子が待つ客室に戻った。
「どこに行ってたのよ!!!」
高倉は、彼の顔を見るなり、彼に叫んだ……。彼女は半泣きになっており、彼の身を非常に心配していたようだ。
「ゴメン。それより、違う部屋に移動しないか?」
石井はそう言うと、高倉と女の子の手を引いた。
「え?」
手を握られた高倉は赤面した。
「ほら、ドアのところに血がついちゃってるからイヤだろ?」
石井は、強引に高倉と女の子(呆然としたままだ)を引き連れて、その客室から出た。そして、誰もいないことを確認しながら廊下を歩き、ある客室に入った。
「ここならいい。番をしてやるから、おまえはその子といっしょに寝てろ」
彼がわざわざ部屋を移動したのは、尾張たちを怖がっていたからだ……。
「……そう、じゃあおやすみ」
石井の行動と言動を、高倉は不審に思ったが、それからすぐに、女の子といっしょに眠りに落ちた。
船は静かな海を進んでいく。ついさっきまでの戦闘がウソのようだった……。