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ちぎれた世界にて

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 石井たちは、尾張たちが呼びに来るまで、逃げ込んだ客室に隠れていることにした。

 名曲『この素晴らしき世界』が流れる中、銃声と爆発音が何度も消えてくる……。爆発音とともに船が揺れたとき、高倉が悲鳴をあげた。時間が経つに連れ、尾張たちが死んでしまったのではないかという恐怖心が大きくなっていった。なにせ、銃声と爆発音が、どんどん少なく聞こえなくなっていったからだ……。
 そこで、石井は、高倉と女の子をベッドの影に隠れさせ、自分は部屋にあったハンガー(針金ではないしっかりとしたタイプ)を持ち、客室のドアのそばに立った。石井が立っている場所は外から死角で、侵入者が入って来たら、ハンガーで殴るつもりだ。

「クリア−!!!」

 隣りの客室のドアを勢いよく開けた音の後、男の大声がした。船に乗りこんできた敵兵たちが、客室を一つ一つ見て回っているのだった……。どうやら、敵兵は1人ではないらしかった。石井は、1人の敵なら片付けられるのにと思った。ドアには鍵がかかっていたものの、鍵がかかっているからと、捜索をしないわけがない……。

   ガチャガチャ!

 石井たちの部屋にやって来た敵兵がドアノブを回した。鍵を締めているので、ドアは開かない。石井はハンガーを握った。

   バキィ!!!

 敵兵にドアが蹴破られ、別の敵兵が部屋に入ろうとした……。
「えい!!!」
石井はハンガーで敵兵を殴った。ハンガーの金具が、敵兵の右目に命中し、
「ぐっ!!!」
敵兵は痛そうに右目を押さえ、床にうずくまった。
 しかし、廊下にいた敵兵が、石井に自動小銃を向けた……。

   タタタタタタタタタターーーン!!!

 その銃声は、その敵兵の自動小銃からではなく、尾張の自動小銃からだった……。石井に銃口を向けていた敵兵は死に、部屋でうずくまっている敵兵も、尾張に後頭部を撃たれて死んだ。どうやら、部屋を捜索していた敵兵は2人だけだった。
「もう少し部屋に隠れてろ!」
彼は石井たちにそう言うと、部屋で死んでいる敵兵の死体を外にやり、ドアを閉めた。彼の服は返り血だらけで、コゲている部分もあった……。

「様子を見てくる!」
尾張の足音が聞こえなくなると、石井がそう言った。
「え?」
高倉は彼にここにいてほしいと思ったが、引き止めようとしたときには、彼は部屋から出ていってしまっていた……。
 高倉は、女の子を連れて、石井を追おうとしたが、部屋の前に転がっている敵兵の死体2つと目が合ってしまい、震えながら部屋に戻っていった……。

作品名:ちぎれた世界にて 作家名:やまさん