ちぎれた世界にて
第6章 非正規戦
そのとき、ブリッジの外から拳銃の銃声が連続して聞こえてきた。ブリッジに向けて撃っているわけではなく、ブリッジに襲いかかろうとしていた中国の工作員たちに撃っているようだ。
{救援か? それとも、警備員たちか?}
船長である七島がそう考えていると、銃声が止み、ブリッジの外は静かになった。
そして、それからすぐにブリッジのドアが開き、4人の男女が拳銃を構えて入ってきた……。そして、ブリッジに残っていた警備員を皆殺しにした……。
現在、船内にいるのは、その4人と石井たちと船長と数人の船員だけだった……。
「船長、今すぐ東京に戻れ!」
4人のうちの1人が、船長に拳銃を向けて言う。言うまでもなく、その4人は、尾張たちだった……。石井たちも慎重にブリッジに入ってきた。
「君たちは何者だ?」
船長は当然の質問をした。
「オレたちは旅行者だ。さあ、スケジュール通り、船を東京までに向かわせてくれ」
尾張はその質問に答えるとともに、この船を東京に向かわせるように言った。
「しかし、許可が……」
「研究所にはもう誰もいないぞ」
「え?」
パーン!!!
「とにかく、東京に向かえばいいんだ! 船の操縦方法を忘れたのか?」
尾張は窓ガラスを撃つとそう言った……。船長は、黙ってうなずくと、船を出発させた。
「なに!? 船が東京に向けて動き出しただと!?」
東京の防衛省の一室で、スーツ男の富永が電話相手に向かって叫んだ……。研究所から逃げ帰ってきたばかりの彼は、防衛省の自分のオフィスから、研究所のほうの様子をうかがっていたのだった。
「いいか、中隊長。連中を殺せ!!! 私の権限をフルに使うんだ!!! なに、ヘリを飛ばすことぐらいしかできない!? じゃあ、それでなんとかしろ!!!」
富永はそう怒鳴ると、電話をブチ切りした……。
ある基地のヘリパッドの近くに、陸上自衛隊の特殊作戦群の1個中隊が整列していた。整列している兵士たちは皆、覆面をして、自動小銃『M4』を持っていた……。そして、同じく覆面をした中隊長が、彼らの前に立った。
「今から諸君には、中国の工作員たちに占拠された船に乗りこんで、敵を一掃してもらう!!! これは、我が国と中国との間の非正規戦であるから、口外しないように!!! では、諸君!!! 日頃の訓練の成果を見せつけてこい!!!」
中隊長が叫ぶと、
「サー、イエッサー!!!」
なぜか英語で、兵士たちは了解した……。
そして、兵士たちはヘリパッドにあった輸送ヘリ『ブラックホーク』に乗りこんだ。ヘリは10機以上あり、兵士を乗せると次々に離陸していった。中隊長は、最後に離陸したヘリに乗りこんだ。
そして、それらのヘリは、石井たちや尾張たちを乗せた豪華客船がある方角に向かって飛んでいった……。